中小企業が職場のハラスメント防止に本気で取り組むべき理由
なぜ、中小企業こそハラスメント防止に本気で取り組むべきなのか?
大企業よりも中小企業の方が職場のハラスメント防止に真剣に取り組まなければならない理由は明確です。以下、データと実態に基づいた7つの決定的な理由をご説明します。
理由1:少数精鋭体制だからこそ、1人の退職が致命傷になる
中小企業では、大企業のように代替人材を簡単に確保することができません。ハラスメントによって優秀な社員が1人退職しただけで、様々な業務が停滞し、売上機会を損失するリスクが潜在しています。
さらに、残された社員への負担が急増し、連鎖退職のリスクが高まります。連鎖退職は絶対に防がなければなりません。
技術やノウハウの継承が途絶え、事業の根幹が揺らぐリスクも発生します。
実際に、帝国データバンクの調査では、従業員の退職を理由とする倒産が前年比1.6倍に急増しており、中小企業における人材流出リスクが経営危機に直結していることが明らかになっています。
理由2:専門部署も専任担当者もいない — 対応の遅れが被害を拡大させる
大企業には人事部や法務部などの専門部署があり、ハラスメント対応のマニュアルやノウハウも蓄積されています。また、弁護士や社労士、ハラスメント対策の専門家とのネットワークを構築している場合も少なくありません。
しかし中小企業では、経営者や経営幹部がハラスメント対応に当たることが多く、本業に支障をきたします。
また、対応ノウハウがなく、初動を誤って問題をこじらせてしまう可能性も高くなります。
相談窓口を設置しても社内の人間関係が近すぎると、被害者の相談や通報が行為者に伝わって報復されることを恐れるので、有効に機能しません。
労働政策研究・研修機構の調査によれば、中小企業では「事例の蓄積やマンパワーが不足しており、適切な対応ができない」という課題が浮き彫りになっています。
理由3:一度失った信用は取り戻せない - SNSによる拡散リスク
現代では、ハラスメント被害がSNSで瞬時に拡散される時代です。中小企業は、地域密着型のビジネスが多く、地元での評判が売上に直結する会社が多いようです。
採用活動においては、企業口コミサイトやSNSの評価が応募者にとって強い判断材料になります。
一度「ハラスメント企業」というレッテルを貼られると、取引先からの信頼も失いますし、それを知ったら求人に応募する人も当然に減少します。
大企業と異なり、ブランド力や資金力で挽回することが難しい中小企業にとって、「ハラスメント企業」という風評被害は事業存続の危機に直結します。
理由4:損害賠償リスク - 中小企業の財務体力では耐えられない
ハラスメントが訴訟に発展した場合、企業は以下の損害賠償責任を負う可能性があります:
- 慰謝料・治療費などの直接的損害(数百万円〜数千万円規模)
- 裁判費用・弁護士費用(長期化すれば負担増)
- 安全配慮義務違反による使用者責任
大企業であれば企業法務部や顧問弁護士が対応できますが、中小企業には財務的にも体制的にも余裕がありません。1件の訴訟が経営を傾ける可能性すらあります。
そして、職場のハラスメント対策を怠ったために、被害者が自殺した場合の損害賠償額は1億円を超えるケースもあります。
理由5:生産性の低下が経営に直結する - 隠れコストの恐怖
ハラスメントが発生すると、表面化する前から職場全体に悪影響が広がります。
被害者本人は、メンタル不調に陥る可能性があります。
被害者のみならず、目撃者や周囲の社員も萎縮し、自由な発言や挑戦が生まれにくくなります。
職場の雰囲気が悪化し、チームワークの向上など望めません。
中小企業は大企業のような人員の余裕がないため、生産性の低下が売上・利益に即座に反映されます。経営側がハラスメントが発生していることを知ったときには既に多くの損失が発生しているのです。
理由6:採用コストの増大と優秀な人材の獲得困難
ハラスメント対策が不十分な企業は、求人を出しても応募が集まりません。
内定を出しても辞退されるなど、採用単価が高騰し、採用活動コストが経営の負担になります。
特に若年層は職場環境を重視する傾向が強く、企業口コミサイトやSNSで事前にリサーチします。
「ハラスメントに無防備な企業」というイメージは、優秀な人材との出会いを奪い、ハラスメントをする社員の温床になりかねません。そうなれば、この人材不足の時代に企業が生き残ることは極めて困難であると言えるでしょう。